Tech Waves

produced by Hakuhodo DY ONE

本ブログは、株式会社Hakuhodo DY ONEの開発チームによるエンジニアブログです。
それぞれのメンバーが業務を通して得た技術情報や、各種セミナーの参加レポート、またその他トピックについて情報発信を行っています。

人を動かす推進者の心得

こんにちは、廣本です🥋。

社内教育やナレッジ共有風土の醸成に向けた取り組みを長年行っているのですが、人を動かすのは本当に難しいなと感じます。

学習や共有の重要性を一生懸命伝えても、「他の業務が忙しくて…」「すみません、忘れていました」「そもそも、なぜこれをやらないといけないのでしたっけ?」と言われることもしばしばです。思うように周囲の協力を得られず、心が折れそうなときもあります。

しかし、試行錯誤しながら推進をおこなう中で、推進者が持っておくべき姿勢や考え方を自分なりに整理することができました。

そこで今回は、「人を動かす推進者の心得」というテーマで、私なりの見解をまとめてみました。同じ悩みを抱える推進者の方々へ、少しでも参考になれば幸いです。

 

推進者の心得①:「自己責任」という言葉に安易に逃げない

学生の頃は学習カリキュラムが事前に設定されており、たとえ受動的な姿勢であっても自然と学習する機会は生まれるものでした。しかし社会人になると、学習する機会は基本的に自分自身で生み出す必要があります。

もちろん、受講必須の研修を会社や部署が用意してくれているケースもありますが、新しいことや業務領域からはみ出したことを学ぶためには、自分で考えてアクションを起こす必要があります。すなわち、社会人が新しいことを学習するのは「自己責任」になるので、その人が成長できるかどうかはその人次第であり、推進者ができることは何もありません。

……というように、「自己責任」という言葉で片付けてしまうのは簡単なのですが、推進者の本質的な役割は「人を動かす」ことです。

確かに、どう考えどう行動するかは、最終的には本人次第です。しかし、個々人の考えにゆだねているだけでは、大部分の人は動かないままになってしまい、組織として大きな成果を生み出すことはできません。

人を動かし、組織を動かし、新しい風土を根付かせ、新たな成果を生み出すことが、推進者に求められる役割であり、腕の見せどころです。

確かに人を動かすことは大変で難しく、「自己責任」という言葉を使いたくなってしまう気持ちはよくわかりますが、大変で難しいからこそ、誰かがやる価値があるのです。

「どうやったら動いてくれるのだろう」「何がハードルになっているのだろう」ということを常に考えながら試行錯誤し、その過程を楽しむ意識を持つことが、推進者には必要なのだと思います。

推進者の心得②:「推進者 = 先駆者である」という自覚を持つ

王道のバトル漫画において、必ずといって良いほどあるのが修行シーンであり、そこには魅力的な師匠が登場します。『ドラゴンボール』の亀仙人、『ONE PIECE』のレイリー、『鬼滅の刃』の鱗滝左近次、『NARUTO』の自来也など、壁にぶつかった主人公に指示を与え、成長に導く存在として描かれています。そしてその師匠たちは、(少なくとも当時の主人公に比べると)必ず強く、経験があるという特徴をもっています。修行のやり方をあれこれ指示する人が、教わる人より弱く経験が少ないということはありえませんよね。

これを今回の推進の話に置き換えて考えてみましょう。

推進者が、「新機能がリリースされたので学びましょう!」「新しくつくられた共有環境を使ってみてください!」「これからはAIの時代です!AIを業務に取り入れましょう!」といくら呼びかけても、その推進者自身が、「学習したことがない」「環境を使ったことがない」「業務に取り入れたことがない」という状態だったらどうでしょう?具体的な指示やアドバイスをおこなったり、困った人をサポートしたりすることはできません。


また、呼びかけられた人たちも「なぜこの人に言われないといけないんだ」というモヤモヤした気持ちを抱えてしまうかもしれません。例えば『ドラゴンボール』で、ミスター・サタンが師匠となって第3者にかめはめ波の使い方を教える、というエピソードが出てきたら、それはおかしな話だ、と思うでしょう。

まずは推進者自身が、推進することに対して「人に教えられるくらい学習する」「誰よりも一番使い倒し体験する」「自らの業務に取り入れて成果を肌で実感する」ということを意識してやってみましょう。先駆者として先を歩んでいるからこそ、他の人たちをサポートできますし、周囲の人からも信頼してもらえます

推進者の心得③:相手のことを理解する

「人を動かす」といっても、組織の中にはいろいろな人がいます。画一的なアプローチではなく、その人の考え方や特性に合わせた推進の仕方を考えることも重要です。

例えば、新しい技術やツールの導入に対して、「誰よりも先に試してみたい!」と考える人もいれば、「他の人の様子を伺ってから慎重に検討したい」と考える人もいます。

もし推進する相手が前者のタイプであれば、最新情報をいち早く提供し、先駆者として活躍できる場を用意することが効果的です。一方で後者のタイプであれば、具体的な成功事例や導入のメリットを丁寧に説明し、安心感を与えることが重要になります。場合によっては、無理に動かそうとせず、組織全体の流れができてから自然に巻き込まれるのを待つという戦略も有効かもしれません。

また、相手の業務状況や得意不得意、関心事なども理解しておくことが大切です。忙しい時期に無理な依頼をしても動いてもらえませんし、苦手なことを強要しても逆効果になってしまいます。

相手のことを理解し、その人に合った声のかけ方やサポートをすることで、より多くの人を動かすことができるようになります。

推進者の心得④:心理的安全性を確保する

推進する際に、それをおこなうメリットや効果を伝えることも大切ですが、実は意外と「メリットを与える」よりも「障害を取り除く」というアプローチの方が効果を発揮する場合もあります。

新しいことに挑戦する際、多くの人が「失敗したらどうしよう」「間違ったことをして恥をかきたくない」という不安を抱えています。このような心理的な障壁を取り除き、安心してチャレンジできる環境を整えることが、推進者の重要な役割の一つです。

例えば、「わからないことは何でも聞いてください」と伝えるだけでなく、実際に気軽に質問できる場を用意したり、「失敗は学びの機会」という文化を醸成したりすることが大切です。また、初めての人でも安心して使えるようなマニュアルやテンプレートを整備したり、段階的に学べるステップを用意したりすることも効果的です。

ここで重要になるのが「心理的安全性」という概念です。

心理的安全性とは、組織行動学者のエイミー・エドモンドソン氏が提唱した概念で、**「チームの中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態」**を指します。

具体的には以下のような状態を作り出すことを意味します。

  • 質問しやすい雰囲気: 「こんなこと聞いていいのかな」と躊躇せず、どんな初歩的な質問でも気軽にできる環境
  • 失敗を責めない文化: 新しいことに挑戦して失敗しても、それを学びの機会として捉え、責められることがない文化
  • 多様な意見の尊重: 推進する内容に対して疑問や異なる意見を持っていても、それを表明できる空気
  • サポート体制の明示: 困ったときに誰に相談すればいいか、どこに情報があるかが明確になっている状態


心理的安全性が確保されていない環境では、人々は「間違ったことを言って恥をかきたくない」「失敗したら評価が下がるかもしれない」という不安から、新しいことに挑戦することを避けてしまいます。逆に、心理的安全性が高い環境では、人々は積極的にチャレンジし、わからないことを素直に聞き、失敗から学ぶことができます。

推進者は、この心理的安全性を意識的に作り出し、維持していく責任があります。「いつでも質問に答えます」と口で言うだけでなく、実際に質問が来たときには丁寧に対応する、多くの人が気軽かつ協力的に参加している様子を見せる、といった具体的な行動を通じて、安心してチャレンジできる環境を整えていくことが大切です。

推進者の心得⑤:それでも「すべての人が動くわけではない」と割り切る

しかし、上記のような様々な工夫をしても、動かない、ときには反発してくる人もいるかもしれません。その場合は「すべての人が動くわけではない」と割り切ることも大切です。非協力的な人たちばかりを相手にして、推進者自身のモチベーションが下がってしまっては意味がありません。

まずは少数でも良いので、協力的・意欲的な人(または部門)を見つけ、その人たちを優先的に推進するようにしましょう。

そうして小さな成功事例からつくり、徐々にムーブメントを起こしていき、 最終的には組織全体に広げていくというアプローチが効果的です。

すべての人を一度に動かそうとするのではなく、協力的な人たちとの成功体験を積み重ねることで、自然と周囲も巻き込まれていくようになります。

まとめ

今回は人を動かす推進者の心得についてまとめてみました。人を動かすというのは本当に大変ですが、その分、大きな意義のある取り組みです。

苦労も多いですが、ぜひあきらめずに、周囲の力を借りながら推進していきましょう!

 

この記事を書いた人

廣本 (id:hrhrkun)

以前はBIの開発業務を担当。今はナレッジマネジメントの推進や、AIエージェントの開発をメインにいろいろ行っています。