こんにちは、廣本です。2025年10月30・31日に開催された『Google Cloud AI Agent Summit '25 Fall』に参加してきました!今回はその中で聴講したセッションをいくつかレポートします。
- 基調講演「Google Cloud と業界の先駆者が示す、AI エージェントの可能性 〜AI エージェントによる業務改革と、動画・画像生成 AI のビジネス活用〜」
- 生成 AI で蘇る!? 昭和の大ヒットドラマ。失われた映像復元への挑戦。
- AI が開発の相棒に。AI Agent 駆動開発の実践と、デベロッパー価値最大化への道
- 野田クリスタルが挑む、AI とお笑いは仲良くやれるのか?
- まとめ

基調講演「Google Cloud と業界の先駆者が示す、AI エージェントの可能性 〜AI エージェントによる業務改革と、動画・画像生成 AI のビジネス活用〜」
基調講演では、最初にGoogle Cloudの寳野 雄太氏から、法人向けAIエージェントプラットフォーム「Gemini Enterprise」の発表がありました。現在、約80%の企業が生成AIを導入しているものの、そのうちの80%以上が収益構造への影響を実感できていないという課題があるそうです。この状況を変える鍵がAIエージェントであり、特にEnd-to-Endのワークフロー実現が重要とのことでした。Gemini Enterpriseでは、主要なコンポーネントとして、頭脳・ワークベンチ・エージェント群、そしてそれらを支えるコンテキストが挙げられています。
真の価値創出には、単一アプリケーションでの部分改善にとどまらず、End-to-Endでワークフロー全体をAIエージェントで変革する必要性があるということを、改めて感じる内容でした。
そしてパネルディスカッションでは、損害保険ジャパン株式会社の中島 正朝 氏、日本テレビホールディングス株式会社の辻 理奈 氏、株式会社メルカリの梅澤 慶介 氏による、AIエージェント導入の実践事例に関する議論が行われました。実際の推進の成果はもちろんですが、成果を出すまでの取り組みや考え方が非常に参考になりました。
特に参考になったのは現場の巻き込み方です。私もAIの活用推進を行っていますが、ひとりひとりがAIの活用を自分ごと化する必要性と、それを推進する難しさを日々感じています。その中で、このパネルディスカッションを通して、推進のヒントを得ることができました。
- エンジニア自身が、(誰かから依頼されたものではなく)自分で企画して考えて試すというサイクルを回す
- 失敗しても良い・むしろそれが良い経験になるという、一種のお祭り感の演出
- バイブコーディングによる迅速なプロトタイプの提供と、現場のフィードバックに基づく改善サイクル
- 役員自身にAIを使ってもらって理解してもらう
etc
最後のパートでは、株式会社TBSテレビの宮崎 慶太 氏と飯田 和孝 氏から、Veo3の活用事例の紹介がありました。
来年2026年放送予定のドラマ「VIVANT」の本番映像にもVeo3で生成した映像コンテンツが採用されるようです。私も実際の映像を見ましたが、全く違和感がなく、迫力のある映像だなと感じました。既に実用レベルに達するほどの映像が生成できるようになっているのですね。
一方で、リスク管理と著作権の課題も挙げられており、動画生成AIのルール整備の話もありました。便利で革新的な側面がフォーカスされがちなAIですが、これからAIの実用化が進むにつれて、ルールを整備していく重要性も改めて感じました。
また、クリエイティビティに対する言及もありました。人生や人の感情に向き合う必要があるドラマ制作において、AIがつくる企画で「見たことのないワクワク」を創造することは難しい、しかし、AIはアイデアのリサーチや壁打ちとしては非常に優秀であるため、人間のクリエイティビティを拡張するための強力なツールになるということでした。人間 vs AIという対立構造ではなく、人間 with AIという考え方をしていくのが大事かもしれませんね。
生成 AI で蘇る!? 昭和の大ヒットドラマ。失われた映像復元への挑戦。
株式会社博報堂の篠田 裕之 氏と関西テレビ放送株式会社の駒井 有紀子 氏によるこのセッションは、1973年から放送されていたドラマ「どてらい男(ヤツ)」を、AIを用いて復元するという非常に面白い取り組みでした。私は聞いたことないドラマだったのですが、最高視聴率35.2%を記録し、約3年半で全181話が放送された伝説的なドラマとのことです。ただ、当時、テープが高価だったということもあり、当時の放送データが一部欠損しており、その足りない部分を補完するのにAIが活用されています。
実際に制作された動画は下記よりご覧ください。
動画を制作するAI機能自体ももちろんすごいのですが、設定されているプロンプトにも様々な工夫が行われているそうです。登場するキャラクターが見せる本当に細かい仕草や表情が動画の深みを出していると思うのですが、裏側では、キャラクターの特徴を踏まえて「このキャラクターならこんな場面ではこんなアクションをするのでは?」ということをAIに考えさせ、いくつか案からシーンを選んでいるようです。生成された動画自体はもちろんですが、それを演出するための細やかなプロンプト設計の話が聞けて、非常に面白かったです。
AI が開発の相棒に。AI Agent 駆動開発の実践と、デベロッパー価値最大化への道
ジーアイクラウド株式会社の原 隆太 氏によるこのセッションでは、AIをお供にした開発の進め方や、それにともなう開発者の役割の変化について述べられました。このセッション、AI駆動開発とは「AIが利用することを前提とし、開発プロセスの各成果物をAIと共に作成していく開発手法」と定義されています。そしてそのAI駆動開発においては、人間が品質を保証し、成果物に責任を持てるようにすることが大切であり、「説明可能性」「予測可能性」「修正可能性」を担保する必要があるということでした。
特に印象的だったのは、AI駆動開発に伴う開発者の役割の変化です。人間の役割は「作業者」から「設計者」へ変化し、リードエンジニアのように開発プロセス全体を俯瞰して設計する役割を担うようになります。そして、その役割をまっとうするためには、AIに伝わるように「言語化」する能力が必要です。開発者に求められるスキルも確実に変わってくると思われますので、それに備えて必要なスキルを磨いていくことが重要になりそうだなと感じました。
野田クリスタルが挑む、AI とお笑いは仲良くやれるのか?
お笑い芸人の野田 クリスタル 氏と株式会社FANYの山本 泰之 氏のセッションでは、野田氏がプロデュースした、無限にAIがお題を生成する「無限大喜利」について語られました。「無限大喜利」はAIが24時間いつでも大喜利のお題を出してくれるサイトで、いつでも大喜利を楽しむことができます。
開発の過程の中では「ゴリラをテーマにしたお題ばかり出てしまう」等の苦労があったそうですが、ガードレールの作成やキーワードリストをプロンプトに挿入する等の工夫で、お題の多様性を改善したという話がありました。
野田氏のお笑いにおけるAI活用のジレンマの話も興味深かったです。お笑いは本来ニュアンスで感じるもの(面白さを言語化するのは野暮でつまらない)である一方で、お笑いをAIに理解させるためには面白さを言語化する必要があるというジレンマがあるとのこと。これは確かにそのとおりだなと感じました笑。
また、過去のデータを学習して何かを生み出すAIが新しいお笑いを生み出せるかどうか、というのも興味深いテーマでした。他にはないテーマでありつつ、プロンプトの工夫の話もあり、非常に面白く考えさせられるセッションでした。
まとめ
今回は『Google Cloud AI Agent Summit '25 Fall』についてまとめてみました。ここ数年のAIの進化は本当にすごいなと感じるイベントで、大いに刺激になりました。