
私はこれまでに、さまざまな業種・年代の方を対象に研修や勉強会のコンテンツを作成し、進行してきました。その経験の中で、研修推進者にとって「この受講者がいてくれて本当に助かった」と感じる、いわゆる「できる」受講者に何度も出会いました。
今回は、推進者の目線で「できる」受講者がどのような特徴を持っているのか、まとめてみたいと思います。
- 「できる」受講者とは
- 特徴1:個人チャットのDMで質問しない。必ずグループチャットやオープンチャットでコミュニケーションする。
- 特徴2:業務時間外での学習も苦にしない。日常的なインプットの習慣がある。
- 特徴3:抽象的な学びを、具体的な業務に活かせる。
- 特徴4:自学するだけでなく、周囲を巻き込む意識が高い。
- 推進者としての設計・工夫
- まとめ
「できる」受講者とは
まず、「できる」受講者とはどんな存在でしょうか。
推進者にとっての「できる」受講者は、単に自学自習ができて内容を理解してくれるだけでなく、他の受講者の見本となり、積極的に研修全体に良い影響を与えてくれる、非常にありがたい存在です。彼らは研修の雰囲気を活性化し、学びの循環を生み出してくれます。
私が思う、そんな「できる」受講者の特徴が以下になります。
特徴1:個人チャットのDMで質問しない。必ずグループチャットやオープンチャットでコミュニケーションする。

グループチャットやオープンチャットを設けているにも関わらず、研修受講者の中には、推進者にだけ個別で質問をくれる人がいます。質問をしてくれること自体は、非常にありがたいのですが、推進者から見ると、せっかく受講者用のグループチャットやオープンチャットを設けているにも関わらず、個別にやり取りするのは意外と困ります。
理由は大きく2つです。
- 他の受講者も同じ疑問を持っている場合が多いので、オープンな場で共有・議論できると全体の学びにつながるから。
- 個人DMが重なると、推進者の負担が増えるから。
こうした背景には、「みんなの前で質問すると恥ずかしい」「自分だけ知らないと思われたくない」といった心理が働いているのかもしれません。そもそもわからないことがあったとしても、質問ができないという人も多いのではないしょうか。
だからこそ、グループチャットやオープンチャットで質問をしてくれる人、特に最初に質問ができる人は、推進者にとってこの上なく頼もしい存在になります。オープンな場で質問がされることで、ナレッジが受講者間で共有できるだけでなく、そこから議論が盛り上がる可能性があります。また、誰かがグループチャットやオープンチャットを使い始めることで、そこに参加するハードルが下がり、利用が活発になることも期待できます。
例:
たとえば、あるデジタルツールの導入研修で「ここをクリックするとエラーになる」とグループチャットで質問したAさん。その後、同じ疑問を持っていたBさん、Cさんも自然にやり取りへ参加。最終的には自分たちで問題を切り分けて解決し、受講者の「わかった」が広がる好循環が生まれました。
特徴2:業務時間外での学習も苦にしない。日常的なインプットの習慣がある。

研修によっては業務後の学習や課題提出が求められることもあります。
「学習はあくまで業務」「プライベートの時間は大事」という考え方も当然あり、そのスタンス自体は尊重されるべきものです。
一方で、「できる」受講者は、普段から書籍や記事、動画、社内ナレッジでインプットを続けているため、「業務/業務外」という感覚が薄く、空いた時間をうまく使って学習に取り組んでいます。
このような受講者は研修外のタイミングでも手を動かし、小さな疑問や気づきをその後の研修で積極的に発言してくれます。それによって場の学びが深まるだけでなく、「やらされている」ではなく「できるようになりたい」という目的意識を持って学習をしてくれるため、受講者コミュニティの推進力になるのです。
例:
週に一度の研修の合間に、業務の隙間時間や自宅で動画コンテンツやマニュアルを確認し、自分なりの疑問をメモしてくるDさん。研修時にその疑問を共有することで、ほかの受講者の理解も進み、「一緒に学ぼう」という空気づくりに一役買ってくれることがあります。
特徴3:抽象的な学びを、具体的な業務に活かせる。

研修で得た知識をそのまま終わらせず、「自分の業務のこの場面で使ってみた」と早速具体化できるのも「できる」受講者の特徴です。小さく実践して効果を測り、必要に応じて自分なりに改善を重ねていく姿勢があります。
すぐに業務で実践できる受講者は、研修の受講目的が「理解」ではなく「業務成果への接続」であることを意識してくれています。だからこそ、「学んで終わり」ではなく、そこで得た知識をすぐに業務に活かすことができます。
そうした事例を他の受講者と共有してくれることで、推進者としても現場での効果や定着を実感でき、組織全体への展開もより進みやすくなります。
例:
AIツールの新しい使い方を知ったEさんが「自分の業務の中で時間がかっていた作業が効率化できた」とチャットで共有。そのフィードバックが現場の成功例となり、他のメンバーも積極的に活用しはじめるなど、波及効果が生まれました。
特徴4:自学するだけでなく、周囲を巻き込む意識が高い。

「できる」受講者は自分だけできればいいという姿勢で終わりません。気づいたことを共有したり、受講者同士で質問に答え合ったり、時には同じ受講者の良い取り組みを称賛したりします。
こうした行動は受講者コミュニティのムードを前向きにし、推進者がすべてを担わなくても自走する状況をつくってくれます。
例:
投稿に対するリアクションや、「この方法いいですね」「自分もやってみます」という返信等、受講者同士で褒め合う文化ができたことで、推進者がいなくてもチャットが活性化。互いに教え合うサイクルが自然に回りはじめます。
推進者としての設計・工夫
しかし、推進者は「できる」受講者の登場を受動的に待つだけではいけません。「できる」受講者の行動が引き出されるような設計ができるかどうかこそ、推進者の腕の見せどころです。
- 質問はオープンな場で行うルール化
研修冒頭で「質問はグループチャットで」「良い質問があれば全員でシェア」と明言し、最初は見本を示すことでハードルを下げる。 - 良い質問・共有はリアルタイムで称賛
「今の○○さんの質問はみんなの学びにつながる素晴らしいものです!」と小まめに拾ってフィードバック。 - 業務に接続する実践課題を用意
学んだことをすぐ業務で試せる小さな課題や「○○のケースで使ってみてください」といったチャレンジをセットする。
こうした設計によって、受講者一人ひとりの積極性や主体性を引き出しやすい場作りが可能になります。
まとめ
今回は研修推進者の視点から、研修を盛り上げてくれる「できる」受講者の特徴をまとめました。
同時に、これは私自身が研修の受講者として意識して実践していることでもあります。「場をオープンに使う」「自分の業務に結びつける」「共有を惜しまない」など、ちょっとした工夫で研修がぐんと実り多いものになります。
これから推進者として研修を設計する方、あるいは受講者として参加する方、双方の参考になれば幸いです。